16年前、ぼくは漫画みたいなネット恋愛をした。
その時、”てるまに”に電流走る――!
これからする話は、ぼくが約16年間、
誰にも言わずにいた話。
もちろん妻にも話したことがない。
隠していたというより、話すタイミングを失ったまま16年経った。
もう時効でいいだろう。
16年前だし。
そろそろ誰かに聞いてほしい。
これは恋愛の武勇伝じゃない。
どちらかというと、若い頃のぼくがネットの向こうから向けられた好意に浮かれて、承認欲求をこじらせていく話だ。
皆さんはネット恋愛ってしたことあるだろうか。
ぼくは16年前にちょっと変わったネット恋愛を経験した。
これを読んでくれてるあなた。
ちょっとぼくの過去の話を聞いてください。
2010年。
ぼくは当時大学1年生で、名古屋で1人暮らしをしていた。
その頃、ネットで爆発的に流行っていたものと言えば。
そう、ニコニコ動画である。
基本的にぼくはいつも動画を見てるだけの見る専だったが、前からサイトの中には気になるコンテンツがあった。
ニコニコ生放送。
“あなたも自分のチャンネルを作って放送してみませんか?”
強烈に惹かれた。
1人暮らしの大学生は暇なのだ ※諸説あり
思い立ったが吉日。
さっそくチャンネルを作成し、ぼくは生主(生放送主)となった。
なお、当時のユーザーネームは”てるまに”ではないが、ややこしくなるので、この記事の中では”てるまに”とさせて頂く。
さて、チャンネルは作った。
だけど何を放送するのか?
ぼくは金なし暇ありのただの大学生。
話せることといえば、雨の日に原付でマンホールの上で滑って膝出血したけど、車から降りてきた強面のおじ様に介抱された話とか、ケーキ屋さんの厨房で働くバイトに応募したら、なんか顔で採用されてホールで接客やらされて、お金持ちなマダムにショーケースのケーキを端からぜーんぶ買ってもらって、結果時給上がった話とかそれくらいである。
えーい、ままよ。
やらない失敗よりやって大成功!
放送開始ボタンを押す。
ここからぼくの世界は一変することになる。
「では今日はこれで放送終わりまーす、
またね。バイバイ!」
数か月後。
ぼくは生主としてそこそこに配信活動していた。
アクティブ数は毎回15人くらい。
底辺ではないが中堅でもない。
ただ、毎回放送を楽しみだと言ってくれるファンが一定数いるくらいにはなっていた。
放送内容は雑談・凸待ち・声真似・ゲーム実況など。
当時のニコ生っぽいことは一通りやっていたと思う。
この日も放送を終え、skypeを開いた。
Skypeとは古代の通話アプリである。
当時のネット民はだいたいここにいた。
放送で凸待ちをする為にIDを公開していた為、さっそく何人かから「お疲れ様でした~」などのチャットがきている。
その中の1人。
ひな(仮名)という方からのチャットを開く。
ひな「てるまにさんの声が好きです。付き合ってほしいです。」
その時、”てるまに”に電流走る――!
脳内がスパークして思考が追い付かない。
「声が好き」
嬉しい。
ありがとうございます。
「付き合ってほしいです」
????
当時のぼくは彼女がいなかった。
いや、たまたま、その時はいなかった。
ここは非常に大事なので強めに言っておきたい。
しかし見たことも聞いたこともないお方と付き合うほど恋愛に飢えてはいない。
ぼく「ありがとうございます。嬉しいですけど付き合うのはちょっと」
ぼくは律儀に返信した。
生主たる者、ファンと付き合うのは良くない キリッ(`・ω・´)みたいな、今思えばド素人が何言ってんだこいつみたいな思考だった。調子に乗るな小僧。
ひな「通話だけでもだめですか?」
ぼく「はい、通話なら」
ちょっと躊躇ったが、せっかくの好意を無下にするのは…と思い、1度だけ通話をしてみることにした。
ひなは21歳。
ぼくと同じ大学生だった。
東京に住んでいるという。
話している感じ、ちょっと変わってるけど普通の女の子だった。
ひな「その声でひなって呼んでほしいです」
ぼく「ひな」
ひな「//////」
※現在、鳥肌注意報が出ております。16年前の話です。
え、か、可愛い。
なんだこの反応。
話を聞くと、ぼくの放送を割と初期から聞いてくれていたらしい。
勇気を出してチャットを送ったのだという。
しかし、声優でもあるまいし、声だけで付き合いたいとかあるものなのか。
ひなは変わってるなと、当時のぼくは思った。
ひな「いいなあ、その声を聴いて生活できる人」
この子はぼくの声をアロマテラピーか何かだと思ってるのか。
こんな展開は初めてで、どう反応していいのかわからなかった。
しかし年齢がほぼ同じこともあって、ぼくはひなに気を許し始めていた。
とりとめのない話で笑ってくれる。
アニメやネットの話で盛り上がれる。
最高のネット友達だった。
それからひなとはほぼ毎日、通話をする仲になった。
顔も知らない、名前も知らない。
ただ、通話は毎日する。
不思議な関係だった。
相変わらずぼくは生放送を続けていて、
ひなはコテハンを付けて毎回放送に来てくれていた。
コテハンとは固定ハンドルネームのこと。
今でいうと、毎回同じ名前でコメントしてくれる人みたいな感じだ。
そんなある日の夜。
ひなからチャットが飛んできていた。
ひな「良かったら見に来てください」
(????)
リンクが貼られていた。
よく分からないままクリックする。
リンク先は誰かの生放送だった。
すぐにチャンネル名でひなのチャンネルだと気づいた。
いつの間に開設したのか。
通話ではそんな話は1度もしなかったが。
しかもまさかの顔出し配信だった。
(可愛い・・・)
ひなは明らかにビジュが良すぎた。
まるでアイドルのような容姿だった。
でも声は通話で聞いていたひなの声。
この子は間違いなくひなだ。
初回配信らしいが、アクティブユーザー数は500人を超えていた。
当時のニコ生を知っている人ならわかると思うが、アクティブ500人はとんでもない数字である。そりゃ、これだけ可愛ければ人も集まるだろう。
配信画面がニコニコ特有の右から左へ流れるコメントで埋め尽くされる。
チャット欄は読もうとした傍からどんどん下に押し流されていく。
まさにお祭り騒ぎだった。
本人も驚いていて、初回生放送はひなも視聴者も大混乱のまま終わった。
2chに続々とスレッドが建てられていく。
「新星現る」
「この子は何者?」
そんな言葉が飛び交っていた。
妙な気分だった。
高揚感。
優越感。
あの子は、ぼくと毎日通話している。
あの子は、ぼくを好きだと言ってくれた。
自分の中にいる、あまり見たくない黒い感情が顔を出した。
好きとか恋とか言う前に、ぼくはたぶん「選ばれている感じ」に酔っていた。
それを自覚した時、
自分はひどく心の汚い人間だと思った。
でも当時のぼくは、その汚さを見ないふりした。
skypeにチャットが入る。
ひなからだ。
ひな「見てもらえましたか?」
ぼく「見たよ。びっくりした」
ぼくはいつの間にかタメ語になっていたのに、ひなはずっと敬語のままだった。
タメ語でいいと何度も言ったが、
「てるまに様にタメ語なんて使えません」
みたいな、今思い返してもマジでやばいことをいつも言っていた。
ひな「通話いいですか?」
ぼく「いいよー」
いつもの通話が始まる。
でもぼくはもう内心ドキがムネムネだった。
さっき配信で観たあの女の子と今から2人で通話?これは何のラブコメだ?
通話がかかってくる。
ひな「こんばんは!」
ぼく「付き合ってください」
ぼくはめちゃくちゃ面食いだった。
最低である。
もう16年前の話だから若気の至りということで許してほしい。
こうして、晴れてひなとのネット恋愛が始まった。
顔も知らないまま始まった関係は、
顔を知った瞬間に、一気に現実味を帯びた。
この時のぼくはまだ知らなかった。
ひなはこのあと、ぼくの想像をはるかに超えるスピードで有名人になっていく。
そしてぼくは、好きな人が遠くなっていく感覚を画面越しに味わうことになる。
ネット越しの恋愛は、近いようで遠い。
そして誰かに好かれることは、思っているより簡単に人を浮かれさせる。
後編に続く。
終
てるまに
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
あの頃をふと思い出したので、思い切って記事にしてみましたがいかがだったでしょうか。
ご感想頂けたらとてもうれしいです。
普通の日常を面白おかしく書いた記事をお届けします。
登録して頂けたら椅子から転げ落ちて喜びます。
またお会いしましょう。




てるまにさん、めっちゃ気になります🐕
てるまにさーん!
そんな世界があったんだ〜✨あまり触れなかった世界…続き、楽しみにしてます🤭